日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム1-5  肝がんワクチン:基礎から臨床まで
中面 哲也
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2012 年 35 巻 4 号 p. 276

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抄録

  自ら同定した肝細胞がんに特異的に高発現するがん胎児性抗原glypican-3(GPC3)を標的とするペプチドワクチン療法の臨床第・相試験を実施した.ワクチンの安全性と免疫学的有効性ならびに臨床効果を確認し,免疫学的および予後解析を行って,本療法が生存期間の延長においても,今後十分期待できる可能性を示すことができ,製薬企業への導出も実現した.
  ペプチドワクチン療法単独では進行がんへの効果は決して劇的とは言えないが,薬によって劇的な効果を示してもすぐに再発して生存期間の延長に寄与したかわからない場合もよくある一方,免疫療法によって長生きする患者さんもいる.さらに強力な免疫療法の開発,様々な治療との併用療法の開発も目指してはいるが,なぜこの患者には効いたのか,なぜ効かなかったのか,臨床試験からまた基礎研究のプロセスも大切である.作用機序の追求,有効な患者を予測するバイオマーカーの探索など,やるべきことはまだまだたくさんある.
  副作用のないがん特異的免疫療法は,がん治療を大きく変える可能性がある.最近ペプチドを同定する研究が減ってきたようにも見受けられるが,まだまだたくさんのペプチドを同定してたくさんの臨床試験を実施する意義もあると考える.多くの研究者が質の高い基礎研究と臨床試験を繰り返すことで,免疫療法に飢えている多くの患者さんたちに貢献できると信じている.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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