日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム2-2  ケモカイン標的治療
義江 修
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2012 年 35 巻 4 号 p. 278

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抄録

  ケモカインとは細胞遊走を誘導するサイトカインの一群で,生体の恒常性維持,炎症反応,免疫応答などで重要な役割をはたしている.ヒトでは50種近くのリガンドと18種のシグナル伝達型受容体が知られている.さらに5種の非シグナル伝達型受容体が存在する.ケモカインにはよく保存された4個のシステイン残基が存在し,1番目と3番目,2番目と4番目の間でジスルフィド結合を形成することによって安定な分子構造を形成している.そしてN端側の2個のシステイン残基の形成するモチーフからCC,CXC,CX3C,XCの4つのサブファミリーに分類される.ケモカイン系は各種の炎症性疾患の病態形成やがんの転移などに密接に関与しており,そのためケモカイン系は治療標的として高い注目を浴びてきた.特に,ケモカインレセプターはすべて細胞膜を7回貫通する3量体Gタンパク質共役型レセプターであり,このグループのレセプターからは多くの有用な薬剤が生み出されている.そのためケモカインレセプターも有望な薬剤標的と考えられ,多くの製薬会社によって薬剤開発が試みられてきた.しかしながら,ケモカインレセプターを阻害する薬剤で実際に臨床応用に至った例は極めて乏しい.本講演では最新の知見も交えてケモカイン系の様々な病態生理における役割について紹介するとともに,ケモカイン系を標的とする薬剤開発の現状と今後の可能性について考察したい.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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