日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム2-4  JAK標的治療
山岡 邦宏久保 智史園本 格士朗前島 圭佑田中 良哉
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2012 年 35 巻 4 号 p. 280

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抄録

  JAK(Janus kinase)阻害薬トファシチニブは関節リウマチ(RA)を対象とした臨床試験において生物学的製剤に匹敵する効果がみられ,新規抗リウマチ薬として現在最も注目されている.当科にて臨床試験に参加した51名の検討では,トファシチニブ投与後より血清IL-6濃度低下,末梢血CD4+ T細胞の増殖抑制とIL-17,IFN-g産生抑制を認め,臨床効果との相関を認めた.さらに,RA患者より採取した軟骨と滑膜を免疫不全マウス皮下に移植した実験では,トファシチニブによりマウス血清中のヒトIL-6, IL-8とMMP-3はいずれも低下傾向を示し,滑膜の軟骨浸潤も濃度依存的に抑制された.滑膜より単離した線維芽細胞とCD14+単球に対する直接作用はみられず,CD4+ T細胞の増殖とIL-17, IFN-g産生を強く抑制した.さらに,CD4+ T細胞の上清を用いた培養では線維芽細胞からのIL-6と単球からのIL-8産生が抑制された.つまり,トファシチニブはCD4+ T細胞に直接作用し,増殖と共にIL-17とIFN-gの産生抑制を介して間接的に単球と線維芽細胞からIL-6とIL-8産生抑制することで抗炎症作用を発揮すると考えられた.加えて,線維芽細胞からのIL-6,CD4+T細胞からのIL-17産生,いわゆるIL-6Ampの病態を有する症例においても有効性を示す可能性が考えられた.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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