日本臨床免疫学会会誌
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ランチョンセミナー
ランチョンセミナー1  自己免疫疾患のSeed and Soilモデル—T細胞標的治療の意義—
上阪 等
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2012 年 35 巻 4 号 p. 294

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抄録

  自己免疫による組織傷害は多段階過程である.我々は,多発性筋炎(PM)のマウスモデルを開発して解析し,自己反応性T細胞活性化ばかりではなく筋組織における自然免疫系活性化が筋炎に必須であることを見出した.筋組織反応性T細胞(種seeds)の存在ばかりではなく,筋組織(土壌soil)にseedsを受容する条件付けが必要であることを示し,我々は,これを自己免疫のSeed and Soilモデルと命名した.このモデルは,PM患者で全ての骨格筋に一様に炎症があるわけではないという臨床像と符合する.
  関節リウマチでも,全関節が冒されるわけではなく,自己反応性のT,B細胞活性化に加えて,関節の自然免疫系活性化も重要と考えられる.従来の抗サイトカイン薬,そしておそらくMTX少量間歇投与も関節の自然免疫系活性化を強力に抑制して治療効果を挙げている.近年,治療選択肢に加わったCTLA4-Ig(abatacept)は,強力なT細胞活性化阻害作用で,関節炎を抑制する.その効果は,抗サイトカイン薬に匹敵するが,易感染性を招きにくく,効果が長くにわたって増強する.この治療効果は,関節リウマチではT細胞活性化が究極的には関節の自然免疫系活性化をも支配することを示している.
  自己反応性T細胞は,自己免疫の根本原因であり,その抑制は治療の鍵である.CLTA4−Igによる強力なT細胞活性化阻害は様々な自己免系疾患で効果を発揮しうると考えられる.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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