抄録
本研究では,福岡県内の39年生のスギ人工林において,強度間伐前後で樹冠通過雨量,樹幹流量,遮断蒸発量を観測し,その比較を行った。本試験地の間伐前の立木密度は1300本 / haであり,平均直径は31.0 cm,平均樹高は26.2 m,胸高断面積合計は99.7 m2 h-1であった。間伐によって本数にして54%,胸高断面積合計で50%のスギが伐採された。樹冠通過雨の空間的ばらつきは,間伐後の方が間伐前と比較し小さくなった。降水量と樹冠通過雨量,樹幹流量の関係を調べたところ,間伐前後共に,明瞭な正の関係が見られた。降水量に占める樹冠通過雨量と樹幹流量の割合(樹冠通過雨率,樹幹流率)は,間伐前は74%と12%,間伐後は86%と6%であった。このように間伐は,樹冠通過雨を14%増加させ,樹幹流を50%減少させた。降水量に占める遮断蒸発量の割合(遮断蒸発率)は,間伐により12%から6%に減少した。今後は,条件の異なる様々なスギ人工林における事例の蓄積が望まれると共に,間伐後,数年間の長期的な変動を見ることも望まれる。