2019 年 29 巻 1 号 p. 52-57
広角で死角の少ない低侵襲な経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)をアブミ骨手術に応用しており,その有用性について検討した.対象は内視鏡下にオールテフロンピストンを用いFischのreversal steps stapedotomyを施行した22例25耳で,術後聴力成績と合併症の有無を後方視的に解析した.
術後聴力成績は気骨導差15 dB以内が24耳,聴力改善15 dB以上が24耳,聴力レベル30 dB以内が13耳であり,日本耳科学会基準で25耳,全例が成功であった.AAO-HNS基準では術後気骨導差で10 dB以下が22耳,10–20 dBが3耳であった.合併症の頻度はめまい4例,耳鳴り3例,味覚障害2例であり,めまいの1症例を除き全て一過性のものであり,顕微鏡下手術による過去の報告と比べて少ない傾向であった.低侵襲でアブミ骨周囲を明視下におけるTEESは,アブミ骨手術においても有用な術式と考えられた.