日本臨床免疫学会会誌
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W1-1  日本人脱髄性疾患の疾患関連遺伝子
吉村 怜磯部 紀子松下 拓也吉良 潤一
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2012 年 35 巻 4 号 p. 299a

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抄録

  多発性硬化症(MS)発症における遺伝的要因の関与は確実で,欧米白人ではHLA-DRB1*1501などのHLA class・遺伝子がMSの強力な疾患感受性遺伝子であることが以前から知られている.近年,欧米白人MSの全ゲノム関連解析が行われ,50以上のHLA領域以外の遺伝子がOdds比は小さいながらも,疾患感受性に寄与することが報告された.過去4回のMS全国臨床疫学調査により,日本人のMS有病率が30年で4倍に急増し,発症年齢が若年化していることが示された.我々は,日本人脱髄性疾患患者の遺伝的背景を調査し,以下を明らかにした.MSでは,DRB1*0405が疾患感受性遺伝子となっており,その保有者は発症年齢が早く,障害の進行が遅く比較的良性の経過をとる.若い世代ほどDRB1*0405を有するMS患者が増加していたことから,近年の日本人MS患者の増加と発症の若年化は,DRB1*0405保有者群の発症増加による可能性が考えられた.他方,日本人でもDRB1*0405を有さないMSは,DRB1*1501が疾患感受性遺伝子となっていた.IL-7受容体のシグナリングを減少させるIL-7RA rs6897932のCC遺伝子型は,DRB1*0405保有者でのみMSの疾患感受性を高めていた.血管新生を抑制するNOTCH4を不活化する変異(rs422951 Gアリル)は,MSに疾患抵抗性を付与していた.また,NMOでもMSでも共通してDRB1*0901が疾患抵抗性遺伝子となっていた.NMOでは,抗AQP4抗体陽性者でのみDRB1*1602とDPB1*0501が疾患感受性遺伝子となっていた.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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