抄録
[目的]インフラマソームは感染やストレスに応答して形成される蛋白複合体で,caspase-1を活性化して炎症性サイトカインを放出する機構である.とりわけNLRP3インフラマソームについては,NLRP3遺伝子変異がCAPS(cryopyrin関連周期熱症候群)の原因であることが明らかになり,急速に研究が進んだ.CARD8はcaspase-1依存性IL-1β放出やNF-κB活性などの負の制御因子として知られているが,NLRP3インフラマソームとの関係については,NLRP3(δLRR)と会合するという報告はあるものの,不明の点が多い.私たちはCARD8がNLRP3インフラマソームの機能を制御している可能性について検討した.[方法]HEK293細胞にNLRP3インフラマソームの構成要素(NLRP3,ASC,procaspase-1,proIL-1β)およびCARD8(完全長,FIIND,CARD)の遺伝子を導入した.発現した分子の会合は,免疫沈降で検討した.上清のIL-1β濃度をELISAで測定した.[結果]NLRP3(WT)とCARD8が会合した.これはASCを共発現させると,濃度依存性に解離した.CAPS関連変異NLRP3(R260W, D303N, H312P)は,CARD8と会合しなかった.CARD8の共発現は,NLRP3(WT)インフラマソームによるIL-1β放出を減少させたが,CAPS関連変異NLRP3のIL-1β放出には影響を与えなかった.CARD8は,FIINDを介してNLRP3と会合した.[考察]CARD8はNLRP3インフラマソームの負の制御因子であることが示唆された.CAPS関連変異NLRP3は,この制御を受けないことが示唆された.