日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
Workshop
W6-6  関節リウマチにおけるCTLA4-Ig共刺激シグナル阻害剤のCD8+ T細胞への影響
松谷 隆治李 穎村上 美帆關口 昌弘松井 聖北野 将康大村 浩一郎井村 嘉孝藤井 隆夫黒岩 孝則中原 英子前田 恵治船内 正憲村上 孝作入交 重雄森田 智視川人 豊三森 経世佐野 統西本 憲弘
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 4 号 p. 313b

詳細
抄録
【背景と目的】アバタセプト(ABT, CTLA4-Ig)は,CTLA-4分子の細胞外ドメインとヒトIgG1のFc領域からなる可溶性融合蛋白で,共刺激分子CD28よりも高い親和性でCD80/86と結合し,T細胞の活性化を抑制する.関節リウマチ(RA)患者におけるABT治療が,感染や発癌に対する免疫監視機構に関わるCD8+ T細胞にどのような影響を与えるかを検討した.
【方法】生物学的製剤未使用RA患者に対するABTの有効性と安全性の検討試験(ABROAD試験)に登録した31例の患者から治療前および治療後6ヵ月に末梢血単核球を分離し,T細胞活性化に関わるCD25, CD69, CD62L等の細胞表面マーカーをFACSで解析し,CD4+ T細胞とCD8+ T細胞の間で比較した.
【結果】CD28+細胞の割合は,CD4+ T細胞に比べCD8+ T細胞で低く(mean: 94% vs. 37%), CD8+ T細胞におけるCD28+細胞の割合は患者年齢と逆相関した(r=−0.62, P=0.0019).ABT治療によりCD4+ T細胞中のCD25+細胞の割合は有意に低下したが(%mean±SD: 11.8±5.3 to 5.9±5.3),CD8+ T細胞中のCD25+細胞への影響はなかった(5.8±4.6 to 6.0±3.7, P=0.96).
【考察】CD28の発現頻度はCD4+ T細胞とCD8+ T細胞で異なる.高齢者におけるCD28発現頻度の低下はCD8+ T細胞による免疫監視機能の低下を示唆する可能性がある.ABTはCD4+ T細胞特異的にCD25の発現を抑制し,免疫監視に関わるCD8+ T細胞の活性化への影響が小さいことから,ABT治療時の感染や発癌リスクの増加は少ないと期待される.
著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top