抄録
Th2細胞はアレルギー反応の誘導に深く関与しているが,T細胞自体は数の上では浸潤細胞の数パーセント程度であり,Th2細胞が実際の炎症の場でどのような機序で炎症誘導における重要な役割を果たしているのかほとんどわかっていない.特にTh2細胞が浸潤するタイミングや浸潤したTh2細胞のダイナミックな細胞動態は不明のままである.本研究では蛍光標識したTh2細胞を移入してリアルタイムで観察するシステムを構築し,アレルギー性喘息モデルを用いて抗原吸入後の肺への浸潤様式の時間的定量的な解析を行った.
OVAで免疫したGFPマウスのCD4+ T細胞を移入したマウスでは,OVAを吸入させて喘息を誘導することにより,OVA吸入前やOVAを吸入させなかった場合に比べて8~20倍の数のGFP+細胞が肺に浸潤していた.肺へのCD4+ T細胞の集積はOVA吸入12時間後から顕著となり,18~36時間後に最大となった.このT細胞浸潤はステロイドを投与することにより抑制された.さらにOVA特異的Th2細胞を用いて解析したところ,OVA吸入後に肺に集積してきたTh2細胞は肺組織内で寄り集まってfocusを形成し,その後に誘導される炎症巣の形成場所を制御していると考えられた.この新しいイメージングシステムは生体内での気道炎症誘導メカニズムの解析や,新規の抗喘息薬開発において有用なツールになると期待される.