抄録
【目的】Abatacept (CTLA4-Ig)は抗原提示細胞のCD80/86と結合し,T細胞の活性化を抑制することで関節リウマチ病態を抑制する.しかし制御性T細胞への作用は詳細に検討されていない.
【方法】今回我々はAbatacept使用前後(0, 4 wks)のヒトリウマチ患者末梢血(n=16) CD4+ Foxp3+T cell (Treg)のPhenotype (CD25, CD45RA, CD69, CD62L, CD31, CD39, CD127, CD161),機能マーカー(CTLA-4 (intra), GITR, GARP, LAG-3, HLA-DR)ケモカイン受容体(CCR4, CCR6, CXCR3)および,内在性(Helios)および増殖マーカー(Ki67)と全部で18のマーカーを染色,多色フローサイトメトリー法にて網羅的に比較解析した.
【結果】患者のDAS, CRPは4 wks前後では大きな変化は無かった.TregにおいてCTLA-4, GITR,などの機能分子の発現量は使用4 wks後に有意に低下した.また,CD45RAhigh CD25low (=resting Tregs)の割合はAbatacept使用前後で著明に増加し,CD45RA− CD25high (=activating Tregs)は著減した.一方,Th17マーカーであるCD4+Foxp3−CCR6+CD161+ T細胞は,Abatacept使用により有意に減少した.
【考察】resting Tregは,activated Tregとともに抑制能力を持ち,activated Tregに移行することでvivoにおいても長期間免疫病態を抑制することが知られる.Abatacept使用により,このような機能的Treg (fTreg)の割合が維持され,fTreg/Th17バランスが増加することは,関節炎の長期抑制に関与している可能性がある.