抄録
【症例】37歳,男性.2012年1月に発熱,咽頭痛が出現し,その後手指の関節痛,体幹部の皮疹も生じ始め他院に入院となった.抗生剤治療を施行されたが病状に改善認めなかったため不明熱の精査目的で当科へ転院となった.入院時より急性腎不全,急性肝不全などの多臓器不全に加えてDICを併発し,血球減少,フェリチン・LDH・可溶性IL-2Rの増加を認めた.骨髄穿刺で血球貪食像を確認したため血球貪食症候群(HPS)と診断し,ステロイドパルス療法(mPSL pulse: 1 g×3日間)を施行した.治療開始前の血清インターロイキン(IL)-6は124 pg/mlと高値で,さらに血清IL-18は354000 pg/mlと異常高値を呈していた.その後病状は増悪傾向にあったため血漿交換(PE×3日間)を施行し,後療法としてプレドニゾロン:1 mg/kg/dayに加えシクロフォスファミド大量静注療法(IVCY)の併用を開始した.リウマトイド因子,抗核抗体は陰性で,悪性腫瘍や感染症も否定的だったことから成人発症Still病(AOSD)と診断した.1度の病状再燃はあったが経過は良好で,退院前の血清IL-18は370 pg/mlまで改善した.【考察】これまでHPS合併のAOSD重症例に対してはステロイド単剤のみの病状抑制はしばしば困難で,免疫抑制剤の併用や血漿交換などの集学的治療が必要であると報告されており本症例でもそれらが有効であった.またAOSDの病態に関して血清IL-18などの炎症性サイトカインの推移もふまえて検討し,文献的考察を加えて報告する.