日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
甲状腺機能低下症と1型糖尿病に難治性下痢症を合併し,Foxp3低下を認めたIPEX症候群の女児例
堀内 清華石黒 精中川 智子庄司 健介永井 章新井 勝大堀川 玲子河合 利尚渡辺 信之小野寺 雅史
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2012 年 35 巻 6 号 p. 526-532

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抄録

  IPEX(immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群は1型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢,易感染性などを主症状とし,転写因子forkhead box P3(FOXP3)遺伝子の変異による制御性T細胞の欠損や機能低下を原因とするX連鎖性の原発性免疫不全症である.1型糖尿病,甲状腺機能低下症に難治性下痢を合併し,IPEX症候群と考えられた12歳女児例を報告する.患児は10歳時から下痢が遷延化し,著明なるいそうが認められた.12歳時に行われた消化管内視鏡所見と病理所見からクローン病と診断され,5-アミノサリチル酸製剤に加えてプレドニゾロン,アザチオプリン,インフリキシマブによる治療を要した.その結果,便性の改善ならびに炎症反応の低下など一定の治療効果が認められたが,プレドニゾロンの減量により下痢が増悪して体重も減少し,治療法の選択に難渋した.患児は2歳時に1型糖尿病を,3歳時に甲状腺機能低下症を発症しており,難治性腸炎とあわせてIPEX症候群でみられる臨床像を呈していた.ただ,本症例ではCD4+CD25+ T細胞中のFoxp3の発現は低下していたがFOXP3遺伝子には異常を認めなかった.過去の報告においてFOXP3遺伝子に変異のないIPEX症候群例では易感染性を認める場合が多いが,本症例では反復する細菌感染は認められなかった.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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