抄録
本研究は魚の行動を把握するための第一歩として,静水中を1尾で遊泳するアユの遊泳特性を解明したものである.実験では半径を0.75∼1.15mの5ケースに変化できる円形水槽を用いた.円形水槽の中心にアユを1尾入れ,壁面に到達するまでの軌跡をビデオカメラで撮影した.それより,アユの挙動は直線と屈折で構成され,初期遊泳,普遍遊泳および壁面効果遊泳の3つに分離されることが分かった.また,普遍遊泳における遊泳距離および屈折角度はガンマ分布で,遊泳速度は正規分布で表現されることを解明した.さらに,遊泳距離と屈折角および遊泳速度と屈折角は相関がないが,遊泳距離と遊泳速度は相関が存在することを解明し,両者の関係式を提案した.そのため,静止流体中を1尾で遊泳するアユの挙動をシミュレートすることが可能となった.