日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
脳幹部腫瘍との鑑別に組織生検が有用であった多発性硬化症の11歳男児例
中澤 裕美子前川 貴伸小穴 慎二石黒 精太田 さやか寺嶋 宙柏井 洋文久保田 雅也堤 義之中澤 温子師田 信人阪井 裕一
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2013 年 36 巻 3 号 p. 175-179

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抄録
  多発性硬化症の診断は,病巣が単発性の場合,しばしば脳腫瘍や脳炎・脳症との鑑別が困難になる.今回われわれは延髄に2 cm大の腫瘤性病変を認め,当初脳幹部グリオーマが疑われたが,最終的に多発性硬化症の診断に至った11歳男児例を経験した.患児は下肢痛の出現後,約2週間の経過で四肢麻痺,意識障害,呼吸不全が進行した.急性の臨床経過がグリオーマの臨床経過と合致せず,診断が困難であったため,手術自体の危険性を説明の上,組織生検を施行した.組織像では明らかな腫瘍細胞を確認しなかったこと,及び症状が急性に進行していることから非腫瘍性疾患の可能性を考え,ステロイドパルス療法を施行したところ速やかに回復し,ほぼ障害を残さずに退院した.その後初発から9か月後に他の部位に再発し,臨床的に多発性硬化症の診断に至った.脳幹部の組織生検は容易ではないが,適切な治療法選択の上で極めて重要な役割を果たした.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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