日本臨床免疫学会会誌
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総説
ケモカイン標的療法
義江 修
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2013 年 36 巻 4 号 p. 189-196

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抄録

  ケモカインは細胞遊走をおもな作用とするサイトカインの一群で,ヒトでは50種近くのリガンドが存在する.またレセプターはすべて7回膜貫通Gタンパク共役型レセプターであり,シグナル伝達型レセプターとして18種,デコイ/スカベンジャーレセプターとして5種が知られている.またケモカインは機能的に大きくおもに好中球,単球,好酸球などを遊走し,急性炎症に働く炎症性ケモカインとおもにリンパ球や樹状細胞に作用して免疫応答や慢性炎症に働く免疫系ケモカインに分けられる.そのため,ケモカイン系は各種の急性・慢性炎症や免疫疾患に対する有望な治療標的となりうると考えられ,過去20年間にわたり,ケモカインレセプターを標的とする薬剤開発が盛んに進められてきた.しかしながら,実際に臨床応用に達した例は極めて乏しい.そのおもな理由として,ケモカイン系の高度な作用的重複性とヒトとマウスの間でもみられる大きな種差があげられる.特に後者は,個々のケモカインレセプターの疾患適応性を動物実験から見極めることを困難にし,また候補薬物の前臨床試験を動物で行うことを困難にしている.そのため,ケモカインレセプターを標的とした薬剤開発の可能性はいまだ十分に見極められたとは言い難い.本稿では,それぞれのケモカインレセプターの疾患関連性を検討し,さらに実際に現在臨床応用に至っているCCR5阻害薬(Maraviroc),CXCR4阻害薬(Plerixafor),抗CCR4抗体(Mogamulizmab)について紹介したい.

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© 2013 日本臨床免疫学会
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