日本臨床免疫学会会誌
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総説
チロシンキナーゼSykの生理機能とその阻害薬
千原 一泰木村 幸弘本定 千知竹内 健司定 清直
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2013 年 36 巻 4 号 p. 197-202

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抄録

  Spleen tyrosine kinase(Syk)は,福井大学医学部において単離された非受容体型チロシンキナーゼである.SykはIgE受容体活性化を介したマスト細胞のヒスタミン放出やサイトカイン産生,マクロファージのファゴサイトーシス,破骨細胞の活性化,さらにB細胞の分化や活性化に必須の役割を担っている.また,最近の研究からある種の癌や自己免疫疾患,真菌やウイルス感染との関連も明らかになってきた.Sykが細胞機能の根幹に関わる重要な分子であることが次々と明らかとなるにつれ,その阻害薬の開発と種々の疾患に対する臨床応用への期待が高まっている.このような強い要望に応え,これまでに多くのSyk阻害薬が開発されてきた.しかし,そのすべてが臨床治験にまで至らなかった.ところが近年,新たなSyk阻害薬が開発され,アレルギー性鼻炎や関節リウマチへの有効性が脚光を浴びている.特にR788(フォスタマチニブ)は経口Syk阻害薬として開発され,米国において第III層試験が実施されている.本稿ではSykの発見の経緯,構造と生理機能を踏まえた上で,新しいSyk阻害薬について概説したい.

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© 2013 日本臨床免疫学会
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