日本臨床免疫学会会誌
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W2-5  TTPの病態と自己抗体
松本 雅則
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2013 年 36 巻 5 号 p. 336

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抄録
 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,全身の微小血管に血小板血栓が形成される疾患であり,血小板減少,溶血性貧血,腎障害,発熱,精神神経症状の古典的5徴候で知られている.長く原因不明であったが,1998年にvon Willebrand因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13活性が著減することで,TTPが発症することが報告された.VWFは,その分子量が大きいほど血小板との結合能が強い.血液中への産生直後は,非常に大きな分子量で血小板血栓を作る危険性が高いため,ADAMTS13によって適度な大きさの分子量に制御されている.ADAMTS13活性が著減する機序として,遺伝的にADAMTS13活性が著減する場合(先天性TTP)と,ADAMTS13に対する自己抗体が産生される場合(後天性TTP)が存在する.ADAMTS13自己抗体には,活性中和抗体(インヒビター)と非中和抗体が存在するが,臨床現場で用いられるのはインヒビターである.国内での我々の検討では,ADAMTS13活性著減後天性TTP186例でインヒビター陽性率は99%であった.後天性TTPはこのように自己免疫疾患であるが,自己抗体の産生は一時的なものであり,血漿交換などの治療により寛解となれば,2/3の症例は再発しないと報告されている.後天性TTPの病態解析が進んだことで,血漿交換やリツキシマブなどの治療効果が説明可能となった.今後,さらなる後天性TTPの治療成績の改善のためには,ADAMTS13自己抗体の産生機序を詳細に解析することが重要である.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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