日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P6-04  SOX9のリン酸化抑制を介したIL-17によるヒト間葉系幹細胞の軟骨細胞分化抑制作用
近藤 真弘山岡 邦宏園本 格士朗福與 俊介尾下 浩一岡田 洋右田中 良哉
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2013 年 36 巻 5 号 p. 399b

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抄録

【目的】間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有するため関節リウマチ(RA)の破壊関節への再生治療ツールとして期待される.IL-17はRA病態に寄与し,軟骨基質の分解や軟骨細胞のアポトーシスを誘導するが,軟骨細胞分化への作用は不明である.そこで,IL-17によるMSCの軟骨細胞分化に対する作用を評価した.【方法】ヒト骨髄由来MSCを軟骨分化誘導培地(CIM)で21日間ペレット培養することで軟骨細胞分化を誘導した.【結果】CIMによる軟骨細胞分化誘導の初期過程でIL-17受容体の発現は増強され,軟骨基質と軟骨マーカー遺伝子発現が誘導された.これに対して,IL-17の添加により軟骨基質と軟骨マーカー発現は抑制された.軟骨細胞分化のマスター転写因子であるSOX9はCIMによる分化誘導過程において発現の増強と共に顕著なリン酸化が誘導されたが,IL-17はリン酸化のみを抑制した.また,SOX9をリン酸化するprotein kinase A (PKA)活性はCIMで誘導され,IL-17により抑制された.さらに,PKA阻害薬であるH89は,軟骨基質と軟骨マーカー遺伝子の発現を顕著に抑制した.【結論】PKAとSOX9の活性化はMSCの軟骨細胞分化に重要であり,IL-17はこれらの活性化抑制を介して軟骨細胞分化を阻害することが示唆された.RA患者において,MSCを用いた細胞治療により効率的に軟骨を再生するためには,関節液中のIL-17活性を抑制しておくことが重要であると考えられた.

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© 2013 日本臨床免疫学会
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