抄録
びまん性肺疾患の診断には気管支肺胞洗浄(BAL)が有用であり,BAL液中の細胞分画(マクロファージ,リンパ球,好中球,好酸球の割合)や微生物学的検査の結果が,診断および治療方針を決める上で非常に重要な情報となる.しかし問題点として,上述した従来の検査項目のみでは診断をある程度絞ることはできても,診断確定までは至らないことも多いことが挙げられる.また,BALは気管支鏡検査下に施行されるため患者への負担が大きく,また呼吸状態の悪い患者ではBALが施行できないケースもあり,診断を絞れないまま治療に踏み切ることが多いのも事実である.当科では,上述した従来の検査項目に加え,BALリンパ球のフローサイトメトリー解析(CD3,CD4,CD8,CD25,CD56)を行っており,また原則として,BAL施行症例のBAL上清と血清はすべて保存している.本研究の目的は,(1)これまで蓄積してきたBALリンパ球解析結果を疾患別に比較して,疾患特異的な所見がないか検討すること,(2)BAL上清および血清中の種々のサイトカインを網羅的に測定し,疾患特異的な診断マーカーが存在しないかを検討することである.研究対象は2009年以降のBAL施行症例とし,サイトカイン測定はBD社のCytometric Bead Array Systemを用いる.