日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P9-18  腫瘍随伴症候群としてのpalmar fasciitis and polyarthritis syndromeの一例
大慈彌 久絵高桑 由希子村上 義彦御影 秀徳土田 興生吉岡 拓也前田 聡彦大岡 正道山田 秀裕尾崎 承一
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2013 年 36 巻 5 号 p. 425b

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抄録
 背景:腫瘍随伴症候群(PNS)は標的臓器の一つとして皮膚や関節があり,悪性腫瘍の初発症状として出現する事があるため,他疾患との鑑別が必要になる.今回,我々は難治性の強皮症(SSc)として転医を繰り返し,診断に時間を要したpalmar fasciitis and polyarthritis syndrome (PFPS)の一例を経験したので,報告する.症例:52歳女性.2013年1月に近医で間質性肺炎と皮膚硬化を指摘.抗セントロメア抗体陽性,レイノー現象を認め,SScと診断された.3月より,手指の多関節痛,嚥下困難が出現し,急速に悪化したため,原因精査のため転医を繰り返したが,SScに伴う関節痛と逆流性食道炎と考えられていた.多関節痛は急速に進行し,手指の拘縮に至ったため,精査目的で当科受診となった.多関節炎と手掌腱膜炎,皮膚硬化,嚥下障害を呈し,胸腹部CTで下部食道,噴門部近傍に腫瘤影,傍大動脈リンパ節腫大,上部消化管内視鏡検査で下部食道に半周性の隆起性病変を認めた.以上の所見から,食道扁平上皮癌T3N1M1,StageIVと診断した.fluorouracilとcisplatinを投与し,腫瘍の縮小と共に多関節炎は改善した.結語:本症例は食道癌によりPFPSを発症したと考えられる.嚥下障害と多関節痛がSScの一症状と判断されたため,食道癌の診断に時間を要した.従来,SScは年単位で進行する結合組織疾患であるので,急速に進行するPFPSを認める時は,PNSを鑑別に挙げるべきであるという教訓的な症例であった.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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