抄録
【緒言】抗MDA5抗体は成人の無筋炎型皮膚筋炎のマーカーとされ,陽性例では急速進行性間質性肺炎(AIP)の発症リスクが高い事が知られている.一方で,小児の陽性例の臨床像に関する報告は未だ少ない.【症例】11歳女児.手指の朝のこわばり,腫脹・疼痛を主訴に近医受診し,ゴットロン兆候,爪周囲炎,両手指の関節炎を指摘され,リウマチ性疾患疑いで当院紹介となった.筋症状は伴わず,関節症状が主体で,外来でNSAIDと抗生剤を開始したが,発熱・炎症反応上昇も伴うようになり,精査加療目的に入院となった.胸部CTで右S6に浸潤影を認めたが,呼吸症状は認めなかった.皮疹部の皮膚生検では皮膚筋炎に矛盾しない結果で,関節エコー・MRIでは手指・手根部に広範な活動性の増殖性滑膜炎の所見を認めた.安静のみで皮膚・関節症状は軽減し,炎症反応も低下傾向となり入院17日目に一旦退院となった.しかし退院翌日より関節症状が再燃し,高熱,皮膚症状の増悪を認め退院10日後に再入院となった.再入院後7日目に抗MDA5抗体陽性が確定し,胸部CTでもS6の浸潤影に改善がなく,AIP発症ハイリスクの皮膚筋炎と診断し,mPSLパルス+シクロスポリンで加療した.その後は解熱し,肺野の浸潤影は消退傾向となり,皮膚・関節症状も消失した.【結語】筋炎症状を欠き,増殖性滑膜炎に肺病変を伴った抗MDA5抗体陽性の女児の一例を経験した.上記加療でAIPの発症なく,臨床症状の改善が得られている.