日本臨床免疫学会会誌
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総説
緑膿菌の免疫回避機構
嶋田 高広松村 到
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2014 年 37 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

  緑膿菌は水まわりなど自然および生活環境中に広く存在する常在菌の一種であり,代表的な日和見感染症の原因細菌である.免疫能に異常がない個体には通常病原性を示さないため,弱毒細菌に分類されるが,免疫不全患者においては致死的な感染症を引き起こしうる.代表的な院内感染の病原菌でもあり,近年多くの抗菌薬に対して耐性を獲得した多剤耐性緑膿菌が出現し,臨床の場において深刻な問題となっている.緑膿菌の病原性規定因子に関しては種々の遺伝子欠損緑膿菌株の解析などから多くの知見が得られており,緑膿菌はⅢ型毒素分泌機構,Exoenzyme,バイオフィルム形成などの,宿主の免疫系を障害または回避するさまざまな機構を備えていることが明らかとなってきた.またクオラムセンシングと呼ばれる細菌間情報伝達機構によって,その病原性がコントロールされていることが明らかとなっている.一方,宿主側の緑膿菌の侵入を検出,防御する機構も種々の遺伝子欠損マウスの解析から明らかになってきた.本稿ではこれらの緑膿菌の病原性規定因子とその宿主免疫系障害機構,宿主の緑膿菌認識機構と緑膿菌による宿主免疫系回避機構に関して述べる.

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© 2014 日本臨床免疫学会
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