日本臨床免疫学会会誌
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総説
胸腺移植併用による新しいアロ造血幹細胞移植法の開発-その機構と難治性疾患への応用-
保坂 直樹
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2014 年 37 巻 1 号 p. 42-47

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抄録

  同種造血幹細胞移植(アロhematopoietic stem cell transplantation;アロHSCT)は,白血病,免疫不全症,あるいは固形腫瘍等の治療に有効である事が示されてきた.しかしながら,通常のHSCTでは治療困難な疾患も存在する.我々は近年HSCTに同じdonorからの胸腺組織を移植(thymus transplantation, TT)する,新しいアロHSCT法をマウスモデルを用いて開発した.本方法では従来のHSCT単独法やHSCT+ドナーリンパ球輸注入法(donor lymphocyte infusion, DLI)に比較してT細胞機能は増強するが,強いGVHDは起こらない.結果として副作用が少なく,かつ有効性の高いHSCTが可能となり,従来のHSCT法では治療困難だった老齢宿主に発症する自己免疫性疾患,放射線抵抗性宿主におけるループス腎炎,あるいは過致死量放射線照射などにも効果を示した.本アロHSCT+TT法は難治性疾患の治療法の一つになる可能性がある.

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© 2014 日本臨床免疫学会
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