日本臨床免疫学会会誌
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37 巻, 1 号
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総説
  • 伊藤 大介, 野島 聡, 熊ノ郷 淳
    2014 年 37 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      セマフォリンファミリーは分泌型及び膜型の蛋白である.もともとは神経発生のガイダンス因子として同定された.近年,様々な報告から,セマフォリンの中に生理的にも病理学的にも,免疫反応に関わるものが存在することが明らかになってきた.このようなセマフォリンは免疫セマフォリンと呼ばれ,Sema3A,3E,4A,4D,6D,7Aがあげられる.これらの中には,免疫細胞の活性化や分化に関わるセマフォリンもあれば,免疫細胞の輸送を助ける役割を持つものも存在する.さらに,セマフォリンの代表的な受容体には,plexinやneuropilinがあり,これらは細胞特異的な発現パターンを有し,多種のシグナル反応に関わっている.現在,セマフォリンとその受容体は様々な疾患の診断及び治療ターゲットとなる可能性があると考えられている.今回,免疫おけるセマフォリンとその受容体の役割をⅢ型及びⅣ型セマフォリンを中心に述べていく.
  • 岡崎 和一, 住本 貴美, 光山 俊行, 内田 一茂
    2014 年 37 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis: AIP)とIgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)の病態における免疫異常について述べた.IgG4-RDの膵病変と位置づけられる1型AIPの病因は不明であるが,免疫遺伝学的背景に自然免疫系,Th2にシフトした獲得免疫系,制御性T細胞などの異常が病態形成に関与すると考えられる.IgG4の産生には制御性T細胞や自然免疫異常を介したIL-10, BAFFなどのTh2サイトカインの関与が示唆される.自己免疫性膵炎の動物モデルを含めた最近の知見ともとに,発症機序に関する仮説も紹介した.
  • 三宅 幸子
    2014 年 37 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      Mucosal associated invariant T(MAIT)細胞は,T細胞受容体にインバリアントα鎖(マウスVα19 Jα33,ヒトVα7.2 Jα33)を発現するT細胞であり,MR1分子に抗原提示される.粘膜組織に多く存在し,自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする自然リンパ球として機能すると考えられている.ヒトでは,末梢血αβT細胞の数%を占める大きな細胞集団であり,CD8陽性もしくはCD4陰性CD8陰性の細胞が大部分である.細菌や真菌に反応し,感染症病態に関与することが報告され,腸内細菌の代謝産物が抗原として働くことが示されている.自己免疫病態との関連については,動物モデルを用いた研究で多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎では制御性に働くが,関節炎モデルでは病態悪化に関与する.自己免疫疾患では,多発性硬化症,関節リウマチ,全身性エリテマトーデスの末梢血ではその頻度が低下しており,自己免疫病態への関与が示唆された.
  • 小倉 剛久, 亀田 秀人
    2014 年 37 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどに代表される自己免疫性疾患の発症,増悪と季節の関連が報告されている.季節性の特徴は各々の疾患,報告によって異なるが,日光(紫外線)や感染の関与など病態における環境因子を推測する上で重要な要素となり得る.近年ではビタミンDと疾患の関連や,同一疾患における自己抗体による病因の違いなどの報告も認められている.
  • 嶋田 高広, 松村 到
    2014 年 37 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      緑膿菌は水まわりなど自然および生活環境中に広く存在する常在菌の一種であり,代表的な日和見感染症の原因細菌である.免疫能に異常がない個体には通常病原性を示さないため,弱毒細菌に分類されるが,免疫不全患者においては致死的な感染症を引き起こしうる.代表的な院内感染の病原菌でもあり,近年多くの抗菌薬に対して耐性を獲得した多剤耐性緑膿菌が出現し,臨床の場において深刻な問題となっている.緑膿菌の病原性規定因子に関しては種々の遺伝子欠損緑膿菌株の解析などから多くの知見が得られており,緑膿菌はⅢ型毒素分泌機構,Exoenzyme,バイオフィルム形成などの,宿主の免疫系を障害または回避するさまざまな機構を備えていることが明らかとなってきた.またクオラムセンシングと呼ばれる細菌間情報伝達機構によって,その病原性がコントロールされていることが明らかとなっている.一方,宿主側の緑膿菌の侵入を検出,防御する機構も種々の遺伝子欠損マウスの解析から明らかになってきた.本稿ではこれらの緑膿菌の病原性規定因子とその宿主免疫系障害機構,宿主の緑膿菌認識機構と緑膿菌による宿主免疫系回避機構に関して述べる.
  • 保坂 直樹
    2014 年 37 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      同種造血幹細胞移植(アロhematopoietic stem cell transplantation;アロHSCT)は,白血病,免疫不全症,あるいは固形腫瘍等の治療に有効である事が示されてきた.しかしながら,通常のHSCTでは治療困難な疾患も存在する.我々は近年HSCTに同じdonorからの胸腺組織を移植(thymus transplantation, TT)する,新しいアロHSCT法をマウスモデルを用いて開発した.本方法では従来のHSCT単独法やHSCT+ドナーリンパ球輸注入法(donor lymphocyte infusion, DLI)に比較してT細胞機能は増強するが,強いGVHDは起こらない.結果として副作用が少なく,かつ有効性の高いHSCTが可能となり,従来のHSCT法では治療困難だった老齢宿主に発症する自己免疫性疾患,放射線抵抗性宿主におけるループス腎炎,あるいは過致死量放射線照射などにも効果を示した.本アロHSCT+TT法は難治性疾患の治療法の一つになる可能性がある.
原著
  • 三宅 剛平, 勝山 隆行
    2014 年 37 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      リウマチ性多発筋痛症(PMR)において,初診時および治療経過におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3)値との関連について検討した.2010-2012年に当院初診となり,ACR/EURLA 2012のPMR暫定分類基準を満たすことが確認された22例を対象とした.初診時のMMP-3については,値が得られた症例19例の平均値は200.8 ng/mlであり,19例中15例で基準値より高値であった.治療開始1ヶ月でのデータの変化については,プレドニゾロン(PSL)量が平均2.75 mg/dayより11.3 mg/dayに増加し,CRPについては6.92 mg/dlより0.33 mg/dlへ著明に低下していた.しかしMMP-3については225.1 ng/mlに上昇していた.1年以内PSL離脱群7例とPSL離脱困難群15例の比較では,MMP-3についてはPSL離脱困難群で高値の傾向がみられ,初診より3ヶ月後にMMP-3値において有意に高値となった(p = 0.011).MMP-3はPSL内服の影響を受けるものの,PMRの疾患活動性を反映していると考えられ,PMRにおけるPSL離脱の成功の予測因子として有用である可能性がある.
症例報告
  • 清水 武, 石黒 精, 高柳 隆章, 松井 猛彦, 利根川 尚也, 前川 貴伸, 板橋 家頭夫
    2014 年 37 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      ループスアンチコアグラント(LA)は小児において感染に伴い一過性に産生され,凝固異常をおこすことがある.特にLA陽性で低プロトロンビン血症を伴うループスアンチコアグラント陽性・低プロトロンビン血症(lupus anticoagulant-hypoprothrombinemia syndrome: LAHPS)では出血症状を示す.マイコプラズマ感染症の肺外病変として抗リン脂質抗体症候群による血栓症や一過性のLA産生を認めることがあるがLAHPSの報告はない.症例は9歳,女児.発熱,咳嗽と両側下腿の紫斑を認めた.先行するアデノウイルス胃腸炎にマイコプラズマ肺炎が続発し,紫斑は内因系と外因系の凝固異常が原因であった.クロスミキシングテストはインヒビターパターンを認め,凝固因子活性は広範に低下,低補体血症と複数の抗リン脂質抗体価(LA,抗カルジオリビン抗体,ホスファチジルセリン依存性抗プロトンビン抗体)の上昇を認めた.ミノサイクリン投与とLAHPSに対して無治療で経過観察した.出血症状は速やかに軽快し,発症1か月後に凝固異常は改善した.本症例では複数の感染症と抗リン脂質抗体産生がLAHPSの発症に関与したと考えられた.
  • 岡部 浩祐, 和泉 泰衛, 宮下 賜一郎, 入野 健佑, 川原 知瑛子, 地内 友香, 野中 文陽, 江口 勝美, 川上 純, 右田 清志
    2014 年 37 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/05
    ジャーナル フリー
      症例は35歳男性.ぶどう膜炎,炎症所見,大動脈の主要分岐部の動脈壁の肥厚を認め,高安動脈炎の診断のもと,プレドニゾロン(40 mg/day)とメトトレキサート(6 mg/week)で治療が開始され症状の改善を認めていた.治療開始2年後に,躁症状などの精神症状が出現し,精査のため入院となった.神経学的所見,頭部MRI,脳血流シンチでは異常認めなかったが,髄液検査でIL-6の上昇(65.4 pg/ml),血清IgDの増加を認め神経ベーチェット病が疑われた.血管病変の存在と併せて,特殊型ベーチェット病と診断し,インフリキシマブの投与を開始した.30歳時より周期性発熱の病歴がありMEFV遺伝子解析を行った所,エクソン2にE148Q/L110P複合ヘテロ変異を認めた.これら遺伝子異常が,本症例の非典型的なベーチェット病の病態に関与している可能性があり文献的考察をふまえ報告する.
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