日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
シンポジウム
シンポジウム1-5  腸管上皮幹細胞を用いた炎症性腸疾患への再生医療
佐藤 俊朗
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 37 巻 4 号 p. 260

詳細
抄録
  炎症性腸疾患は粘膜免疫の制御異常を病態とする慢性炎症性疾患である.腸管上皮細胞は100兆個におよぶ腸内細菌や多様な食餌抗原に対する防御壁となっており,そのバリアー機能の破綻は病態悪化に関与している.さらに,炎症性腸疾患の長期寛解維持における粘膜治癒の重要性が認識され,腸管上皮機能を標的とした治療が期待されている.腸管上皮幹細胞は体内で最も高い自己再生能力を有しているが,最近になるまでその単離培養が困難であった.我々は,基底膜に類似した細胞外基質とWnt, R-spondin, EGF, Nogginから構成される幹細胞ニッチを培養皿で再現することにより,腸管上皮幹細胞の培養技術を開発した.本培養法では,腸管上皮幹細胞が生体内上皮組織を擬似したオルガノイドを形成し,永続的にゲノムの完全性を維持した幹細胞増幅が可能であることがわかった.さらに,オルガノイドはマウス炎症性腸疾患モデルにおいて,粘膜損傷部に生着することが示され,その治療効果が確認実証された.本シンポジウムでは,腸管上皮幹細胞を用いた培養技術とその再生医療応用について発表したい.
著者関連情報
© 2014 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top