日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
ワークショップ
W4-3  天疱瘡モデルマウスにおける表皮抗体沈着の定量的検出法
小野 さち子江川 形平椛島 健治
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 37 巻 4 号 p. 311a

詳細
抄録
  天疱瘡は,ケラチノサイトの接着分子であるデスモグレインに対する自己抗体産生により発症する自己免疫性水疱症である.産生された自己抗体が血液中から表皮へ移行・沈着することで病態が形成される.実際,野生型マウスに病原性抗デスモグレイン抗体を投与すると,新生児マウスでは表皮内水疱を生じ,成体においては脱毛および口腔粘膜びらんが形成される.本モデルマウスを用いて天疱瘡の病態形成メカニズムが広く検討されてきたが,「血液循環中から表皮への自己抗体の移行がどのように制御されているか」についてはあまり解明されていない.これは,従来,表皮の自己抗体沈着の評価に用いられて組織蛍光抗体法では感度,定量性ともに低く,微細な抗体沈着量の変化を捉えることに限界があったためである.そこで我々は,新たに,フローサイトメトリーの手法を用いて表皮への抗体沈着を感度良く,定量的に評価する方法を確立した.非病原性抗体を用いる事で,上述の天疱瘡モデルマウスと異なり,表皮内水疱形成に伴う二次的な炎症等の影響なく,抗体の動態を観察することが可能であった.本手法により,血中の自己抗体循環量のみならず,皮膚局所における刺激(物理的刺激,炎症等)が自己抗体沈着量,つまりは皮疹の形成に大きく寄与することをはじめて明らかにした.また,皮膚への抗体移行の制御という観点から天疱瘡の治療法について検討を行ったのでここで紹介したい.
著者関連情報
© 2014 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top