日本臨床免疫学会会誌
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W5-3  炎症性腸疾患を呈する原発性免疫不全症
西田 直徳
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2014 年 37 巻 4 号 p. 313b

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抄録

  原発性免疫不全症(PID)の中には自己免疫疾患や自己炎症性疾患を呈するものが少なからず存在する.自己炎症性疾患の一病型である炎症性腸疾患(IBD)は慢性肉芽腫症やWiskott-Aldrich症候群などでときどき合併することが知られている.難治性IBDと診断されていた症例でIL-10/IL-10R欠損症が同定されたのを機に,IBDを呈するPIDが注目されるようになった.XIAP欠損症の主症状はEBウイルス関連または反復性の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)であるが,一部にIBDを合併していることが明らかとなった.わが国のXIAP欠損症の約40%にあたる9例のXIAP欠損症でIBDを呈していた.反復するHLHの経過中にIBDを合併する症例のみならず,IBDのみを症状とする症例も認められた.治療抵抗例が多く,生物学的製剤の使用にも関わらずコントロール不良のため,腸切除に至った症例もある.わが国において小児例を中心に難治性IBDの中にはXIAP欠損症を基礎疾患とする患者が少なからず存在することは明記すべきである.1例ではあるが,臍帯血移植によって合併したIBDが寛解に至った症例がある.PIDを基礎疾患とするIBDは造血幹細胞移植の治療対象となりうるので,早期発見による治療介入により患者QOLの向上につなげたい.

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© 2014 日本臨床免疫学会
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