抄録
【目的】自己免疫疾患の病態において,B細胞は病原性あるいは制御性という相反した役割を果たしている.近年ヒトB細胞は,マウスB細胞とは異なり,刺激誘導下に強力にgranzyme B(GzmB)を産生することが判明した.今回,我々はヒトGzmB産生B細胞の誘導メカニズムとその機能について健常人ならびにSLE患者にて検討を行った.【方法】ヒトB細胞のGzmB遺伝子ならびに蛋白発現についてはqPCR,細胞内染色,ELISAにて評価した.またGzmB産生B細胞の機能として,共培養による活性化T細胞の増殖,生存の変化を解析した.【結果】B細胞に作用するサイトカイン中ではIL-21が最も強力にGzmB産生を誘導し,抗原受容体刺激はIL-21と相乗的に作用した.GzmB発現誘導に重要な細胞内シグナルとしてSTAT3が判明した.また,GzmB産生B細胞と共培養によって,活性化T細胞の生存や増殖は阻害され,この阻害はGzmB発現のsilencingにて解除された.一方,SLE患者B細胞ではGzmB産生誘導は健常人に比べ有意に高く,その産生増強のメカニズムとしてtype 1 IFNやTLRの関与が示唆された.【結論】これらの結果から,SLEの生体内環境ではGzmB産生B細胞がより強く誘導されることが判明し,この細胞集団のヒト自己免疫疾患の病態における特異的な役割が強く示唆される.