抄録
【背景】自己免疫性腸症関連75 kDa抗原(AIE-75)もしくはvillinに対する自己抗体はFOXP3遺伝子変異による“X連鎖多腺性内分泌不全症,腸疾患を伴う伴性劣性免疫調節異常(IPEX)症候群”の患者に検出され,抗トリプトファン水酸化酵素(TPH)-1抗体はAIRE遺伝子変異による“カンジダ感染と外胚葉形成異常を伴う自己免疫性多腺性内分泌不全症(APECED)”のうち特に消化管機能障害を伴う患者に検出される.【目的】両疾患における各自己抗体の特異性を検討することを目的とした.【方法】リコンビナントAIE-75,GST-TPH-1,GST-villinを抗原とし,患者の血清中の自己抗体をウェスタンブロット法(WB)で解析した.血清は,既に免疫沈降法(IP)で抗TPH-1抗体陽性ないし陰性が確認されている各10例を含む計23例のAPECEDの患者と,7例のIPEX症候群の患者から得た.【結果】抗TPH-1抗体はIPで陽性の10例中8例およびさらに1例のAPECEDの患者で陽性であり,IP陰性例やIPEX症候群の患者では陰性であった.抗AIE-75抗体はIPEX症候群7例中5例で陽性であり,APECEDの患者では全て陰性であった.抗villin抗体はIPEX症候群の患者7例中4例,APECEDの患者23例中3例で陽性であった.【結論】抗AIE-75抗体および抗TPH-1抗体はIPEX症候群およびAPECEDにそれぞれ特異的である.中枢性および末梢性免疫寛容の破綻により,同じ消化管においても異なる自己抗原が標的となっていることが示唆された.