抄録
【目的】SLE患者の末梢血T細胞における発現異常分子を明らかにし,病態への関与を検討する.【研究1】方法:対象は活動性SLE患者8例,健常人8例を第1群,非活動性SLE患者6例,健常人6例を第2群とし,末梢血からT細胞を純化,各群で患者および健常人のRNAプールを作製してGeneChipにアプライした.結果:SLE患者では両群に共通してMx1の発現が亢進していた.【研究2】方法:SLE患者33例,健常人22例を対象とし,Mx1のmRNA発現レベルを定量的PCR法で評価した.結果:Mx1のmRNA発現は,有意にSLE患者群において亢進していた(p<0.0001).【研究3】方法:NPSLE患者20例,精神神経症状を認めないSLE(non-NPSLE)患者9例を対象とし,血清および髄液Mx1濃度を,ELISA法で測定した.結果:SLE患者における血清,髄液Mx1濃度は正の相関(R=0.36)を示し,髄液Mx1濃度は血清Mx1濃度と比較し有意に高値(p<0.05)であった.さらに,NPSLE群の血清Mx1濃度はnon-NPSLE群と比較して高値であった(p<0.05).【考察】SLE患者の末梢血ではIFN誘導蛋白が高発現し,活動性とも相関すると報告されており,また,ウイルス性脳炎,多発性硬化症では中枢神経内でMx1が高発現していると報告されている.【結論】Mx1はSLE患者T細胞で高発現し,NPSLEではnon-NPSLEと比較して血清濃度が有意に高かったことから,NPSLEのバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された.