抄録
【目的】成人発症Still病(AOSD)の診断基準を満たし,家族性地中海熱遺伝子[Mediterranean Fever(MEFV)]遺伝子変異を認め,コルヒチンが著効した症例を経験した.AOSDと診断された症例のMEFV遺伝子多型/変異の有無を検索し,遺伝子多型/変異とAOSDの臨床的特徴およびコルヒチン治療反応性を解析した.【方法】山口の診断基準を満たしたAOSD 48例に対し,IFを取得し,末梢血DNAサンプルを用いてMEFV遺伝子の多型/変異を検討した.症例の臨床情報を診療録から評価し,MEFV遺伝子多型/変異との関連性を解析した.【結果】1)AOSDのうちMEFV遺伝子多型/変異を31例(65%)に認めた.2)アリル変異/多型数(多型/変異率):E84K 2(2.1%),L110P 8(8.3%),E148Q 30(30.6%),R202Q 4(4.2%),P369S 5(5.2%),R408Q 4(4.2%),G634S 1(1.0%),M694I 2(2.1%).健常人75人のアリル多型/変異率はE84K 2(1.3%),L110P 13(8.7%),E148Q 35(23.3%),R202Q 5(3.3%),P369S 6(4.0%),R408Q 5(3.3%)であり,Exon10の変異(G634S,M694I)を認めなかった.3)多型/変異群は自然軽快が多く,周期性発熱をきたす傾向があった.4)多型/変異群7例にコルヒチンを投与し5例で有効であった.【結論】解析したAOSDの65%はMEFV遺伝子多型/変異を保有し,エクソン10の変異も認めた.MEFV多型/変異群は臨床的特徴を有し,コルヒチンが著効を示す症例も認めた.