抄録
【症例】54歳男性.2013年11月下旬より発熱,咳嗽,呼吸苦出現.12月5日に近医で胸部X線を施行,肺炎と診断され抗生剤治療を受けるも改善せず12月24日当院紹介入院となった.胸部X線,CTで両肺に広範なスリガラス影を認め,酸素化不良のため入院当日に人工呼吸管理となりステロイドパルス療法を施行した.入院翌日,Dグルカン322.1pg/mlと高値であることが判明しニューモシスチス肺炎と考えST合剤経管投与を開始.HIV抗体陽性と判明したため二次検査を施行したところHIV-1WB法陽性,RNA定量230000copy/ml,リンパ球数160/μl,CD4陽性Tリンパ球数20/μlから後天性免疫不全症候群と診断.全身に皮疹を認めたためST合剤は1週間で終了,ペンタミジン点滴に変更し2週間投与.これらにより自覚症状,炎症所見,画像所見の改善を認めたため抗HIV治療目的で2014年1月15日他院転院となった.【臨床的意義】患者の自己申告であるが感染経路は不明である.患者の免疫機構とHIVが拮抗した状態(無症候期)は平均10年くらい持続すると言われている.生来健康として病院を受診していなかったため無症候期のリンパ球減少が発見できなかったと推察される.健常者に発症したと考えられる肺炎でも異型肺炎の場合,後天性免疫不全症候群の可能性を考える必要がある.