2024 年 15 巻 5 号 p. 753-760
はじめに:胸椎OPLL術後の麻痺増悪は3割に及ぶ.近年,後方進入前方除圧術の良好な成績が報告されているが,本術式の術後麻痺増悪の詳細は不明である.
対象と方法:胸椎OPLLに対して後方進入前方除圧術を行った24例(男14,女10,平均49歳)を対象とした.麻痺増悪の頻度,時期,再手術,回復までの期間を調べた.責任高位,BMI,罹病期間,術前JOAスコア,嘴型か,黄色靭帯骨化の有無,骨化後弯角,骨化占拠率,固定範囲後弯角,後弯矯正角,MEP導出の有無,切除椎弓数,前方除圧椎体数,硬膜損傷,手術時間,出血量を調べた.麻痺増悪あり群と麻痺増悪なし群で各項目を比較した.
結果:術後麻痺増悪は4例(16.7%)で発生し,全例術直後だった.再手術例はなく,4例中3例は術後4週以内に,1例は術後12週で術前と同程度まで筋力が回復した.麻痺増悪あり群では術前JOAスコアが低く,切除椎弓数が多く,手術時間が長かった(p<0.05).
結語:術後麻痺増悪の頻度は過去の報告と比べ低かった.重度脊髄障害,広範囲除圧,長時間手術が特徴であり,重篤な障害のある脊髄が腹臥位により長時間前方から圧迫されることが麻痺の原因と推測された.