日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P9-001  全身性強皮症の病態におけるケメリンの役割についての検討
高橋 岳浩浅野 善英赤股 要谷口 隆志野田 真史青笹 尚彦市村 洋平遠山 哲夫住田 隼一佐藤 伸一
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2014 年 37 巻 4 号 p. 371a

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抄録
  ケメリンはアディポカインの一種で,免疫細胞に対する遊走促進作用および血管新生促進作用を有しており,関節リウマチ等の炎症性疾患の病態に関与している可能性が示唆されている.今回我々は,全身性強皮症の病態におけるケメリンの役割ついて検討を行った.患者病変部皮膚では健常人皮膚と比較して,ケメリン蛋白の発現は線維芽細胞において低下し,真皮内小血管において亢進していた.培養強皮症皮膚線維芽細胞では,培養正常皮膚線維芽細胞に比較してケメリン遺伝子のmRNAの発現が低下していたが,TGF-βシグナルを抑制するとその発現異常は是正された.血管内皮細胞における転写因子Fli1の恒常的発現低下は強皮症の血管障害の発症に深く関与しているが,培養皮膚微小血管内皮細胞をFli1 siRNAで処理するとケメリン遺伝子のmRNAの発現が亢進した.また,同細胞においてFli1はケメリン遺伝子プロモーターに結合していた.一方,指尖潰瘍を有する強皮症患者では,指尖潰瘍を伴わない患者と比較して血清中ケメリン濃度が有意に上昇していた.以上より,強皮症患者の病変部皮膚では線維芽細胞と真皮小血管においてケメリンの発現異常があり,特に血管内皮細胞におけるケメリンの発現亢進は指尖潰瘍の発症に関与している可能性があることが明らかとなった.また,Fli1の発現異常に基づく強皮症の血管障害の発症機序に,ケメリンが関与している可能性が示唆された.
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© 2014 日本臨床免疫学会
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