抄録
慢性肉芽腫症は,活性酸素産生障害により易感染性や肉芽腫をきたす原発性免疫不全症として知られている.近年,NADPH oxidase複合体で生成される活性酸素の多岐にわたる生理作用が明らかになり,本疾患では肉芽腫形成に代表される過剰炎症の病態の理解に繋がった.現在,過剰炎症の中心的役割を果たしている炎症性サイトカインを標的とした治療の開発が試みられている.モノクローナル抗体を用いた抗サイトカイン療法の安全性には課題が残されたが,今後も,細胞内シグナルの制御など分子免疫学の知見に基づいた治療法が検討されることになる.また,唯一の根治療法である造血幹細胞移植は,移植技術の進歩により治療成績が向上したが,HLA適合ドナーの存在が不可欠である.遺伝子治療は自己造血幹細胞を使用するため,欧米を中心にドナー不在の症例に対して臨床応用が拡大し,既に120例を超える原発性免疫不全症で行われた.この背景には,重篤な有害事象である遺伝毒性の機序が少しずつ明らかになり,遺伝子治療技術へ反映されていることもあげられる.今後,多施設国際共同臨床試験により大規模な臨床研究も準備されている.