日本臨床免疫学会会誌
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総説
慢性腎臓病におけるポドサイト障害の役割
淺沼 克彦
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2015 年 38 巻 1 号 p. 26-36

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抄録

  慢性腎臓病(CKD)の概念が提唱され,本邦におけるCKD患者数の増加が医療経済上問題となっており,CKDに対する新規診断・治療法の開発が急務となってる.CKDの進展を阻止するためには,血液の濾過装置である腎糸球体の維持が必要である.血液濾過を行っている糸球体係締壁は,糸球体内皮細胞,糸球体基底膜(GBM),足細胞(ポドサイト)の3層からなっている.この3層構造により血清蛋白がボウマン腔内から尿中へ漏れ出るのを防ぐバリアとしての機能が果たされている.様々な糸球体疾患において,ポドサイト障害が引き起こされると,ポドサイトの足突起の規則的な噛み合せ構造が消失し,同時にスリット膜の崩壊が生じ蛋白尿が生じる.慢性のポドサイト障害は,ポドサイトのGBMからの脱落を引き起こし,最終的には糸球体硬化へと進展することがわかっている.ポドサイトの機能や構造,蛋白尿出現・糸球体硬化形成のメカニズムについて,分子生物学的手法により,この15年間で急速に解明されて来ている.本稿では,ポドサイトのGBMからの脱落機序やポドサイト障害に対する新規治療法の可能性について著者らの成果をまじえ概説する.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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