日本臨床免疫学会会誌
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38 巻, 1 号
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総説
  • 沖山 奈緒子
    2015 年38 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      皮膚免疫疾患の病理学的分類では,湿疹反応,乾癬様反応に加え,苔癬反応(Lichenoid tissue reaction: LTR)/Interface dermatitis(IFD)と呼ばれる共通する所見を呈する疾患群がある.LTR/IFDに含まれる疾患は,扁平苔癬,紅斑性狼瘡(lupus erythematosus: LE)・皮膚筋炎・混合性結合織病の皮疹や骨髄移植患者の急性移植片対宿主病のような自己免疫疾患から,中毒性皮膚壊死症・Stevens-Johnson症候群のような薬疹まで多岐に渡る.主な病態は,Interferon-γやFasLを介した,CD8 T細胞による角化細胞アポトーシスの誘導であり,形質細胞様樹状細胞の関与も報告された.病態解析のために様々なマウスモデルが作られ,その代表的なものは,角化細胞膜上に卵白アルブミン(OVA)を強制発現させ,OVA特異的T細胞受容体を持つCD8 T細胞を養子移入して発症させる系である.マウスモデルの解析により,JAK阻害薬などの新規治療法候補が挙げられてきており,臨床応用が待たれる.
  • 川野 充弘, 水島 伊知郎, 山田 和徳, 谷口 義典, 佐伯 敬子
    2015 年38 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      IgG4関連疾患はサルコイドーシスのように全身のほとんどすべての臓器・組織を傷害しうる全身の炎症性疾患である.腎臓は,IgG4関連疾患の中でしばしば病変を認める臓器の一つであり,多くの場合,特徴的な画像所見を伴う尿細管間質性腎炎として診断される.一方で,膜性腎症をはじめとする様々な糸球体病変が,尿細管間質性腎炎に合併することが知られている.臨床的には,一部の症例は,腎機能の亜急性の低下を契機に発見されていたが,約8割の症例は腎病変が診断される前に他臓器病変からIgG4関連疾患と診断され,全身精査中に多発性の造影不良域のような特徴的画像所見からIgG4関連腎臓病と診断されていた.組織学的には,花筵状線維化とよばれる特徴的な線維化を伴う形質細胞が豊富な間質性腎炎で,IgG4陽性形質細胞の著しい浸潤を特徴とする.ステロイドに対する反応性は,他のIgG4関連疾患同様に,非常に良好であるが,すでに腎機能が低下している症例では,腎機能は最初の1ヶ月で部分的に改善し,その後はプラトーに達することが明らかとなった.本総説では,IgG4関連腎臓病の臨床所見,検査所見,画像所見,病理所見についての最新の知見を紹介し,鑑別すべき疾患と治療に関する最新の話題についても紹介する.
  • 中島 友紀
    2015 年38 巻1 号 p. 17-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      骨は,脊椎動物特有な運動支持の器官であると共に,生命維持に必須なカルシウムなどミネラルの代謝器官であり,免疫系細胞の分化増殖の場となる造血器官でもある.骨と免疫系は,骨髄微小環境をはじめ,サイトカイン・受容体・転写因子などの制御分子を共有し緊密な関係にある.関節リウマチにおける炎症性骨破壊の研究は,両者の融合領域である骨免疫学に光を当てた.破骨細胞分化因子RANKLのクローニングに加え,種々の免疫制御分子の遺伝子改変マウスに骨の異常が見いだされ,骨免疫学の発展を加速させた.近年では,骨の細胞と造血幹細胞の関係も解明され,骨免疫学がさまざまな疾患の制御に重要な知見を提供するようになった.
  • 淺沼 克彦
    2015 年38 巻1 号 p. 26-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      慢性腎臓病(CKD)の概念が提唱され,本邦におけるCKD患者数の増加が医療経済上問題となっており,CKDに対する新規診断・治療法の開発が急務となってる.CKDの進展を阻止するためには,血液の濾過装置である腎糸球体の維持が必要である.血液濾過を行っている糸球体係締壁は,糸球体内皮細胞,糸球体基底膜(GBM),足細胞(ポドサイト)の3層からなっている.この3層構造により血清蛋白がボウマン腔内から尿中へ漏れ出るのを防ぐバリアとしての機能が果たされている.様々な糸球体疾患において,ポドサイト障害が引き起こされると,ポドサイトの足突起の規則的な噛み合せ構造が消失し,同時にスリット膜の崩壊が生じ蛋白尿が生じる.慢性のポドサイト障害は,ポドサイトのGBMからの脱落を引き起こし,最終的には糸球体硬化へと進展することがわかっている.ポドサイトの機能や構造,蛋白尿出現・糸球体硬化形成のメカニズムについて,分子生物学的手法により,この15年間で急速に解明されて来ている.本稿では,ポドサイトのGBMからの脱落機序やポドサイト障害に対する新規治療法の可能性について著者らの成果をまじえ概説する.
  • 杉田 篤子, 杉田 和成
    2015 年38 巻1 号 p. 37-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      ビタミンB3として知られているナイアシンは,生体内で補酵素として働く,nicotinamide adenine dinucleotide(NAD)とnicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADP)の合成に必須である.ナイアシンは皮膚ランゲルハンス細胞のG protein-coupled receptor(GPR)109Aと結合し,ナイアシン摂取過多時は,頭頸部に血管拡張によるフラッシングを誘発する.他方,ナイアシンの欠乏は,アルコール依存症,薬剤,栄養不良などに起因し,ペラグラに代表される光線過敏症を起こす.したがって,ナイアシンの作用を明らかにすることは,光線過敏症のメカニズムの解明や新規治療ターゲットの探索の上で非常に重要である.最近,ペラグラ患者およびナイアシン欠乏ペラグラマウスモデルでプロスタグランディンE合成酵素(prostaglandin E synthase: PTGES)の発現が亢進していることが明らかになった.さらに,ペラグラによる光線過敏症は,prostaglandin E2-EP4(PGE2-EP4)受容体シグナルが関与し,ケラチノサイトからのreactive oxygen species(ROS)を介して発症することが示唆された.本稿では,ナイアシンの免疫における役割および,ナイアシン欠乏による光線過敏症のメカニズムについて述べる.
  • 舟久保 ゆう
    2015 年38 巻1 号 p. 45-56
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)は妊娠可能年齢の女性に好発する.日本では女性の出産年齢が高齢化しつつあり,RA発症後に妊娠を計画する女性が増えると予想される.RAの妊娠については,RAが妊孕性および妊娠経過に及ぼす影響,妊娠がRAの病勢に与える影響,妊娠・授乳期の薬物治療などが検討されている.RAの疾患活動性が高いと妊孕性は低下することが示されたため,低疾患活動性~寛解を達成・維持してから妊娠計画をたてるのが望ましい.RAの標準治療薬となっているメトトレキサートは催奇形性作用があるため,妊娠計画の少なくとも3か月前から中止して妊娠および授乳中の使用を避けなければならない.最近ではTNF阻害薬治療中の妊娠に関するデータが蓄積されつつあるが,流産,先天異常の発生率増加は示されていない.胎内でTNF阻害薬に曝露した児の長期安全性はまだ明らかになっていないが,妊娠が判明するまでは使用可能と考えられている.また,母乳への分泌も少なく,胎児毒性を認めない.従来の疾患修飾性抗リウマチ薬でコントロール不良だった挙児希望のRA女性でも,TNF阻害薬は治療と妊娠の両立に有用な手段のひとつとなりうる.
第42回総会ポスター賞受賞記念論文
  • 吉崎 歩, TEDDER Thomas F.
    2015 年38 巻1 号 p. 57-64
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      近年,B細胞の働きは単に抗体を産生するのみではなく,抗原提示や炎症性サイトカインの産生,T細胞をはじめとする免疫細胞の活性化誘導など,炎症反応において中心的な役割を果たすことが知られるようになってきた.B細胞は炎症反応を誘導するだけでなく,活性化した炎症細胞に作用することで,免疫抑制作用をも発揮することが知られているが,著者らのグループでは,この中でも特にinterleukin(IL)-10を介して免疫抑制作用を発揮する集団として,CD1dhiCD5+という表面マーカーを発現するB細胞を同定し,主にIL-10を産生することからB10細胞と名付けた.B10細胞は種々の動物モデルにおいて,疾患改善効果を有しているため,新たな治療法の候補として研究と臨床の双方から注目を集めている.長らく,B10細胞の分化誘導因子は明らかでなかったが,著者らはIL-21がB10細胞を顕著に誘導することを明らかとした.またB10細胞の働きはMHC class IIを介した,抗原特異的なものであることを示した.さらに,著者らはCD40リガンドであるCD154とB lymphocyte stimulatorを共発現させたNIH-3T3細胞を作成し,これをフィーダー細胞として用いることでIL-4とIL-21の存在下に,生体内にわずかしか存在しないB10細胞をin vivoで400万倍に増殖させるシステムを樹立した.
  • 好川 真以子, 中山田 真吾, 岩田 慈, 久保 智史, 湯之上 直樹, 汪 曉珮, 田中 良哉
    2015 年38 巻1 号 p. 65-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      SLEは全身性自己免疫疾患であり,その病態形成過程において自己反応性B細胞が中心的に関与し,特にメモリーB細胞への分化偏向と活性化が重要であることが明らかにされてきた.しかし,B細胞の質的な異常とその誘導機構については依然不詳な点が多い.これに比し,T細胞においてはエフェクター細胞への分化,機能的な役割が細分化され,マスター転写因子やケモカイン受容体の発現パターンの異なる機能的なサブセットの存在が明らかとなっている.B細胞の性質を探求する過程において,様々な類似性を有するT細胞のバイオロジーは有効な情報となり得る.そこで,著者らはT細胞のサブセット分類に用いられるケモカイン受容体(CXCR5,CXCR3)に着目して各分化段階におけるB細胞の特徴を検討し,B細胞の再分類を試みた.その結果,SLEではCXCR5減弱とCXCR3増強を伴う病的なB細胞を認めることを見出し,濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞との相互作用を介した自己抗体産生および病態組織に再循環するメモリーB細胞のエフェクター機能の獲得による病態形成の可能性を示した.さらに,これらのB細胞は免疫抑制療法による疾患活動性の改善後も末梢血に残存することから,既存治療では根治困難なSLEの病因に関与している可能性が考えられた.
  • 岡村 僚久, 森田 薫, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2015 年38 巻1 号 p. 69-77
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
      自己抗体は様々な自己免疫性疾患と関連する.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)は自己抗体産生を特徴とする代表的自己免疫性疾患であり,遺伝要因と環境要因がその発症機序に重要であると考えられているが,その詳細な発症機序は不明である.CD4陽性CD25陽性 制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)および,そのマスター制御因子として機能するFoxp3遺伝子の同定により,各種自己免疫性疾患の病態解明に関する研究は著しく進展している.CD4陽性CD25陽性 Tregは胸腺で誘導される内因性Treg(naturally-occurring Treg: nTreg)を主体とするが,その他のTregサブセットとして末梢で誘導される誘導性Treg(induced Treg: iTreg)であるType 1 regulatory T(Tr1)細胞などが知られている.免疫学的恒常性はnTregとiTregが協調することで保たれている.近年,抗体産生抑制能を有するTregサブセットに関する報告が蓄積されてきている.本稿ではSLEにおける各種Tregの役割につき,当研究室で得られた最新の知見も交えて概説する.
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