日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
SLE(抗リン脂質抗体症候群)合併妊娠34週にHELLP症候群を発症した一例;VW因子測定の有用性
丸岡 桃角田 慎一郎古川 哲也本多 釈人吉川 卓宏藤田 計行關口 有希佐藤 ちえり斉藤 篤史西岡 亜紀關口 昌弘東 直人北野 将康松井 聖柴原 浩章佐野 統
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2015 年 38 巻 2 号 p. 121-126

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抄録
  症例:39歳,女性.1993年SLE発症しPSL 30 mg/日より開始.以降,PSL 10 mgまで漸減し外来診察されていた.2012年2月(妊娠24週 0経妊0経産),尿蛋白定性(3+),高血圧,下腿浮腫を認め妊娠高血圧症のため当院産科に入院となった.入院時,1日尿蛋白1.6 gであったが,安静,腎炎食のみで,1日尿蛋白1 g程度に減少したため退院となった.その後,妊娠34週に心窩部痛を自覚し来院,AST 324,ALT 156,PLT 6.9万などの血液検査値異常を認めHELLP症候群と診断,緊急帝王切開術を施行し児を娩出した.児を娩出後も高血圧が持続,1日尿蛋白3.2 g,抗ds-DNA抗体高値,補体C3 46, C4 9, CH50 15.1と低下を認めたためSLEの増悪と診断し,血漿交換療法,免疫吸着療法,メチルプレドニゾロンパルス(mPSL 500 mg/日,3日間投与,後療法PSL 30 mg/日)を施行した.さらに,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬の併用で血圧は安定し,血液・尿検査所見,全身状態も改善した.考察:SLE・抗リン脂質抗体症候群合併妊娠は,高血圧症,腎症,SLE再燃などのリスクがあるとされ,また,HELLP症候群の発症も報告されているがその病態についての報告は少ない.本症例では,血性ADAMTS13の活性の低下はなく,VW因子量の増加を認めたため,非定型血栓性微小血管障害をおこしたと考えられる.
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© 2015 日本臨床免疫学会
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