日本臨床免疫学会会誌
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特集:再生医療の臨床応用
iPS細胞の網膜再生医療-網膜変性疾患への臨床応用
杉田 直
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2015 年 38 巻 2 号 p. 79-85

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抄録
  リプロミングされた細胞は移植のツールとして広く受け入れられている.これらは移植後の拒絶反応が少ない事から,網膜移植を含めた細胞移植で利用されつつある.人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells: iPS cells)は自己の細胞を利用できる事に加えて多種類の細胞・組織に分化する事が可能な細胞として注目され,現在様々な基礎研究および臨床試験が取り組まれている.近年,著者らの研究所では,高純度のヒトiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelial cells: RPE)の分化・誘導に成功した.このiPS細胞由来のRPE細胞は多角形(多くは六角形)で色素を豊富に含んだ細胞で,また,この細胞は生体内のRPE細胞と同等の特徴を有していた(iPS細胞の素因はなし).著者らの研究所とその関連病院では,2014年の9月に滲出性加齢性黄斑変性患者にiPS細胞由来RPE細胞が世界で初めて移植された.また,他家移植に向けた検討の中で,HLAホモドナー(HLA-A, B, DRB1 locus homozygote donors)から樹立したiPS-RPE細胞がHLA拘束下でアロT細胞に反応するかなどを行っているところである.近い将来には加齢性黄斑変性だけではなく他の網膜疾患にも移植の構想があり,その場合iPSバンクを利用した他家移植で行われる予定である.もしHLAが適合する患者T細胞のiPS-RPE細胞への反応が低下するならば,iPSバンク由来の細胞がこれらの網膜疾患に利用できる可能があると思われる.
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© 2015 日本臨床免疫学会
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