日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム1-3 CD4+Tregの病態への関与と疾患制御の可能性
西川 博嘉
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2015 年 38 巻 4 号 p. 235

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抄録

  CD25+CD4+制御性T細胞(Tregs)は,自己に対する免疫応答を制御し自己免疫寛容を維持している.しかし,Tregsによる自己抗原特異的T細胞の免疫抑制機構は十分に明らかにされておらず,その機構を解明しコントロールすることが,がん免疫を含む自己免疫応答を理解し,疾患を制御する上で重要である.Tregsによるメラノサイト自己抗原(Melan A/MART1)特異的CD8+ T細胞の抑制メカニズムを詳細に解析した.Tregsは,抗原提示細胞(樹状細胞など)からの共刺激シグナルを抑制することで,CD8+ T細胞をナイーブフェノタイプに保ちつつ,様々な免疫抑制分子を発現する特徴的なフェノタイプに陥れることが明らかになった.これらのTregsにより抑制されたCD8+ T細胞は,細胞分裂を1度で停止し,抗原再刺激に対して抵抗性で免疫不応答(アネルギー)状態を示した.また,メラノサイトに対する自己免疫応答により引き起こされる白班症では,本自己免疫寛容機構が破綻していた.Tregsによる自己免疫寛容誘導における新たな機序が明らかになり,本機序の制御に基づき自己免疫応答およびその対極にあるがん免疫応答をコントロールすることで,新たな疾患制御法の可能性が示唆された.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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