日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム
合同シンポジウム-1 遺伝子改変T細胞を用いたがん免疫療法
安川 正貴
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2015 年 38 巻 4 号 p. 250

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抄録

  これまでの多くの基礎的研究成果から,がん細胞排除には免疫監視機構が重要な働きを演じていることが明らかとなっている.最近の免疫チェックポイント制御抗体の驚くべき治療成績からも腫瘍免疫の重要性が再認識されている.腫瘍免疫監視機構は様々な免疫担当細胞の相互作用によって成り立っているが,その中心的役割を演じているのが細胞傷害性T細胞(CTL)であり,現在腫瘍特異的CTL誘導を目的としたがんに対する細胞免疫療法の開発研究が進んでいる.これまでに多くの腫瘍関連抗原ならびにそれらのヒトT細胞認識エピトープが同定されており,様々なペプチドワクチン療法の臨床試験の結果が報告されている.さらに,高い臨床効果を期待する目的で,腫瘍特異的T細胞レセプター(TCR)遺伝子導入やchimeric antigen receptor(CAR)による遺伝子改変T細胞作製技術が進んでいる.我々の研究グループはこれまでに,WT1などの白血病幹細胞に高発現している標的抗原を認識するヒトCTLクローンを樹立し,その抗白血病効果をヒト化マウスの実験系で検証してきた.これらの研究成果をもとに,現在WT1特異的TCR遺伝子導入による白血病幹細胞を標的とした新たな免疫遺伝子治療の臨床研究を進めている.本シンポジウムでは,がん免疫療法の世界の現状を解説するとともに,我々が現在行っている腫瘍特異的TCR遺伝子導入による新たながん免疫遺伝子治療臨床試験を紹介する.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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