日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
合同シンポジウム
合同シンポジウム-3 HTLV-1関連脊髄症(HAM)に対する抗CCR4抗体療法の開発
山野 嘉久
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 38 巻 4 号 p. 252

詳細
抄録

  ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の感染者の一部に発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM)は,有効な治療法がなく極めて深刻な難治性疾患であり,画期的新薬の開発が急務である.HAMにおいてHTLV-1感染細胞数(ウイルス量)は長期予後と相関することから,感染細胞を標的とした薬剤開発は根本的治療薬となることが期待されてきたが,これまで実現しなかった.最近,我々はHAMにおいてHTLV-1がケモカイン受容体CCR4発現T細胞に主に感染しており,さらに機能異常を起こすことが病態形成の主因であることを証明した(J Clin Invest 2014).そこで我が国で開発された抗CCR4抗体製剤の,HAMにおける抗感染細胞活性と抗炎症活性を証明し(J Infec Dis 2015),2013年11月からHAMに対する第I/IIa相試験を医師主導治験として開始した.対象は既存治療で効果不十分なHAM患者,主要評価項目は安全性で,最大耐用量を明らかにし,薬物動態について検討する.また副次的に,抗感染細胞効果や歩行時間の非増悪期間などの有効性を探索する.本試験は,世界初のHAMの感染細胞を標的とした根本的治療薬の開発を進めるものであり,その実現はHAMの長期予後改善に結びつく日本発の画期的な治療薬となり,HAMの治療にパラダイムシフトをもたらすことが期待される.

著者関連情報
© 2015 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top