日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム
合同シンポジウム-4 多発生筋炎・皮膚筋炎の筋力低下からの回復を目指して
木村 直樹川畑 仁人上阪 等
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2015 年 38 巻 4 号 p. 253

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抄録

  多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)は,骨格筋が標的となる自己免疫疾患であり,その治療には副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が用いられてきた.しかし,わが国の臨床調査個人票を用いた疫学調査によれば,維持期の患者の55.2%に筋力低下を認め,治療により筋力低下が改善していない現状が明らかとなった.
  多発性筋炎モデルマウスから明らかとなった病態仮説,即ち“seed and soil model”の観点から筋力低下の回復に必要なアプローチを考えると,(1)筋傷害を起こす自己反応性T細胞の抑制,(2)標的筋組織の自然免疫抑制,そして(3)筋萎縮の阻止が重要である.これまでの筋炎治療は主に(1)に重点が置かれている.標的筋組織側の要因に着目すると,過剰な運動やウイルス感染などで起きる筋傷害が筋組織の自然免疫を活性化し,筋炎の発症・増悪に寄与することが示され,これらを回避することも重要である.筋萎縮は一度起きると回復が難しいため阻止することが重要であるが,そのための薬剤として分岐鎖アミノ酸(BCAA)が有効であることが示された.BCAAは骨格筋において蛋白合成を促進するとともに,蛋白分解経路を抑制する.現在,当教室が中心となって筋炎患者にもBCAAが有効か検討する医師主導治験を行っている.このように,筋組織で起きる局所の現象に着目することで新たな治療標的が見つかる可能性がある.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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