日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
合同シンポジウム
合同シンポジウム-6 核酸医薬外用薬によるアレルギー疾患の治療
井川 健
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 38 巻 4 号 p. 255

詳細
抄録

  アトピー性皮膚炎(AD)は,様々な遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合って発症し,その症状が維持されていく慢性の炎症性皮膚疾患であると考えられる.乳幼児期に発症し,その多くは年齢を経るに従って自然寛解していくが,一部は症状の出没をくり返して成人型ADへと移行していく.そのような中に,現時点における標準的治療によっても皮膚症状のコントロールに苦慮する難治例は少なからず存在し,新しい視点からの本疾患の治療方法の確立は急務であると考えられる.ADにおいてはTh2タイプの免疫反応亢進が推察される例が少なくなく,我々は,これを調節することがADの治療につながる可能性について検討してきた.具体的には,Th2タイプの免疫反応の惹起,維持にきわめて重要な役割を果たす転写因子の一つであるSignal transducer and activator of transcription(STAT)6に注目し,その機能を「おとり核酸(decoy ODNs)」を利用して阻害することによるアレルギー性皮膚炎症反応の抑制効果について検討してきた(STAT6 decoy ODNs).同核酸を外用剤として調整し,その効果を動物モデルにおいて確認し,また,実際のアトピー性皮膚炎患者においてもopen-label studyの形ではあるが,その効果を確認した.本セッションにおいては,これらの結果を中心として,STAT6を標的とした核酸医薬外用剤がアレルギー性皮膚疾患,特にアトピー性皮膚炎の新たな治療薬となりうる可能性について述べる.

著者関連情報
© 2015 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top