日本臨床免疫学会会誌
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スポンサードシンポジウム
スポンサードシンポジウム-4 乾癬とメタボリックシンドロームをつなぐアディポカイン
多田 弥生
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2015 年 38 巻 4 号 p. 259

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抄録

  近年,健常人と比較して乾癬患者では有意にメタボリックシンドロームが多く,さらには乾癬それ自体が心筋梗塞などの独立したリスク因子であることがわかってきた.これらの事象は,乾癬にメタボリックシンドロームが加わると,慢性的な全身の炎症が促進され,インスリン抵抗性の増悪から血管内皮機能障害を経て動脈硬化の進展を来たし心血管イベントのリスクが増大するという,いわゆる“Psoriatic March”という概念によって説明されている.加えて,我々は最近,脂肪細胞が分泌するアディポカインのうち,インスリン抵抗性の病態をむしろ改善させ,乾癬患者での血中濃度が低下しているアディポネクチンが,イミキモドで惹起されるマウス乾癬様皮疹のTh17系の免疫反応を制御することを報告した.アディポネクチン欠損マウスでは野生型と比較して乾癬様皮疹が臨床的,組織学的に増悪し,皮膚でのサイトカイン発現をみるとTh17系の免疫反応促進を認めた.In vitroではアディポネクチンはマウス真皮γδT細胞,および,ヒトT細胞からのIL-17産生を抑制した.これにより,メタボリックシンドロームの主役を担う脂肪細胞は,他方,巨大免疫器官として乾癬の炎症制御に関わっていることが示唆され,アディポカインの分泌パターンの制御も乾癬の重要な治療ターゲットのひとつと考えられた.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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