2015 年 38 巻 4 号 p. 260
「免疫記憶」は脊椎動物だけが持つ獲得免疫系(適応免疫系)の象徴的な現象で,リンパ球のT細胞やB細胞が主役を果たす.免疫記憶の現象はインフルエンザをはじめ種々の感染症に対して予防接種が行われ,感染防御に大いに役立っている.逆に,アレルギーや自己免疫疾患の発症に関与する病原性(pathogenic)免疫記憶細胞も存在する.有用な免疫記憶を増強させ,病原性免疫記憶(たとえばアレルギー反応を担う記憶Th2細胞など)を抑制するといった免疫記憶の制御法は未だ開発されていない.今回は,アレルギー性気道炎症を誘導する病原性記憶Th2細胞の同定と我々が最近提唱している「Pathogenic Th population disease induction model」を紹介する.Th1病やTh2病はTh1/Th2のバランスの崩れによって起こるのではなく,病原性のTh1/Th2/Th17細胞分画が,特にmemory細胞になる段階で(環境の影響を受けて)生じ,この病原性細胞分画がTh1病,Th2病,Th17病と呼ばれる慢性炎症の病態を誘導するという,考え方である.
参考文献:
Endo et al. Immunity 35: 733, 2011.
Endo et al. Trends in Immunol. 35: 69, 2014.
Endo et al. Immunity 42: 294, 2015.