抄録
生体を構成する正常な組織・細胞と異なる物質や細胞を排除し,生体を防御する機構を免疫系という.この生体防御機構が破綻した状態を免疫不全症といいなかでも先天的な機能異常によって発症するものを原発性免疫不全症という.近年,易感染性を中心にした従来の免疫不全症に加え,血球貪食症候群,自己炎症性疾患など炎症等の易感染性以外の表現型をとる先天性免疫異常症も原発性免疫不全症として扱われている.近年の遺伝子解析技術の進歩により,原発性免疫不全症の原因遺伝子探索は分子診断が可能になり,診断の精度向上につながった.また,遺伝子治療,標的分子を狙った分子標的治療のためには,原因遺伝子の同定,病態の解明が特に重要である.本発表では,原発性免疫不全症の治療のアップデートとして,遺伝子治療,ガンマグロブリン皮下注製剤,分子標的治療の試み,幹細胞移植,について最近の新しい知見を提示する.