日本臨床免疫学会会誌
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WS1-4 骨軟部肉腫に対するペプチドワクチン療法
塚原 智英村田 憲治江森 誠人渡邉 一絵鳥越 俊彦
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2015 年 38 巻 4 号 p. 286b

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抄録
  骨肉腫に代表される高悪性度骨軟部肉腫は予後不良であり,新しい治療法が求められている.我々は骨肉腫の免疫制御を目指し,自家の骨肉腫細胞株とCTLクローンを用いたcDNAライブラリ発現クローニングで世界で初めて骨肉腫抗原PBFを同定した.PBFは転写調節因子であり,骨肉腫のアポトーシスを制御している.PBF蛋白は骨肉腫組織の92%で,骨軟部肉腫全体では87%に発現が見られた.またPBF陽性の骨肉腫患者の予後は不良であり,PBFは予後不良骨肉腫の標的分子となり得る.そこで我々はHLA-A24/A2拘束性PBFペプチドを設計して骨肉腫患者のペプチド特異的CTL応答を解析し,まず骨肉腫患者に対するペプチドワクチン臨床試験を10例に行った.臨床効果は不変3例,増悪6例で,9例でペプチドに対する免疫応答が検出された.多発肺転移および皮下転移をもつ1例で,ペプチドワクチンに対する高い免疫応答がELISPOTで観察された.また局所再発巣に骨化とCD8陽性細胞浸潤を認めた.この症例はペプチドワクチン療法のみで加療され,合計31か月生存した.そして試験的に実施した再発粘液線維肉腫1例においてPBFペプチドに対する極めて高い免疫応答が誘導され,病勢にも相関した.これらの2症例はいずれも化学療法未施行例であり,病巣が小さかった(2 cm以下).これらの知見は今後のペプチドワクチン療法のさらなる実効化に大変重要と考えている
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© 2015 日本臨床免疫学会
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