日本臨床免疫学会会誌
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WS2-2 多発性硬化症患者に対するナタリズマブ投与による,炎症性・制御性T細胞の不均衡
木村 公俊中村 雅一佐藤 和貴郎岡本 智子荒木 学林 幼偉村田 美穂高橋 良輔山村 隆
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2015 年 38 巻 4 号 p. 287b

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抄録

  【目的】ナタリズマブは,T細胞表面のα4インテグリン(CD49d)の発現を低下させることにより,炎症性T細胞の中枢神経内への浸潤を阻害する.しかし,CD49dは制御性T細胞にも発現している.本研究では,中枢神経への浸潤能を保持するCD49d陽性群に着目し,炎症性・制御性T細胞の動態ならびにナタリズマブ投与との関連を明らかにする.【方法】ナタリズマブ投与中の多発性硬化症(MS)7例(以下MS(n)群),同薬投与歴のないMS 29例(以下MS群)を対象とし,Th1細胞,Th17細胞,Treg細胞におけるCD49d陽性率を解析した(以下,CD49d+Th1,CD49d+Th17,CD49d+Treg).さらに,CD49d陽性メモリーCD4 T細胞における各種mRNA発現を解析した.【結果】MS(n)群ではMS群と比較して,全てのT細胞サブセットでCD49d陽性率の低下を認めたが,CD49d+Th1/CD49d+Treg,CD49d+Th17/CD49d+Tregのいずれも高値を示した(p<0.05).ナタリズマブ投与後に悪化を認めた症例では,これらの値が高値を示した.また,MS(n)群ではMS群と比較して,CD49d陽性メモリーCD4 T細胞中の炎症関連遺伝子の発現が高く,制御関連遺伝子の発現が低かった(p<0.05).【結論】ナタリズマブ投与によって,CD49d陽性率は制御性T細胞においてより大きく低下した.中枢神経浸潤能を保持するCD49d陽性T細胞集団においては,炎症・制御バランスの悪化が示唆された.ナタリズマブ不応性の一因になっている可能性があると考えた.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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